• テキストサイズ

【WJ】短編

第9章 【甘】太陽みたいに笑う君/木兎光太郎


 彼の第一印象は、お日様みたいに笑う人。長い長い梅雨、それが明けて夏がやってきた。その夏空に輝く太陽みたいな人。

 別にバレーが好きだった訳でも、興味があった訳でもない。ただ、友達に頼まれて、友達の彼氏の試合を一緒に見に行ったのがキッカケで、それがなかったら私は多分、彼と出逢えなかったと思う。
 初めて訪れる墨田区総合体育館。いざ会場に入ってみれば人、人、人。高校生の試合。それもたかが予選にこんなに人が集まるのかと驚いた。


「広尾くーん!頑張ってねー!」


 観客席から大声で彼氏の名前を叫ぶ友人。彼氏の広尾君はこっちに向かってひらひらと手を振った。それに友達は広尾君今日もカッコいい!なんて言ったけど、今の何処がカッコよかったのかそれが私には理解出来なかった。正直、恋愛とかよくわかんないし。はいはいと、曖昧に返事をし、試合開始を知らせるホイッスルが鳴った。


「相手どこなの?」
「梟谷だよ。バレーの強豪校。」
「ウチより強いの?」
「うん。あの、二年生の人がね、凄いの。」


 そう言って友達が指を指した先にいたのが光太郎だった。その凄いと言われる彼を目で追うと、高く上げられたボールに合わせジャンプをし、相手コートに叩きつけるような力強いスパイク。その鋭いスパイクに大将君が吹き飛ばされた。


「ヘイヘイヘーイ!」


 わっと湧き上がる歓声。会場中が彼に惹き込まれる。太陽みたいに笑う彼。そんな彼の笑顔に目が離せなくて、それが、初めて私が恋に落ちた瞬間だった。
 試合中、自分の学校の応援なんかすっかり忘れて、彼のスパイクが決まれば嬉しくて、ウチが得点すればなんだかそれが逆に悔しくて。戸美の応援席にいながら、心はすっかり梟谷一色。
 試合は2-0で梟谷の勝利。ガッカリする友達をおいて、私は梟谷の選手のいる方へ駆け出した。


/ 261ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp