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【WJ】短編

第3章 【切甘】孤独な王様/影山飛雄


「大丈夫、飛雄なら皆を引っ張っていけるよ。」


 そう言って私は中学を卒業式した。

 それを私は今も酷く後悔してる。


 一年前の中学バレー県予選、決勝。後輩たちの勇姿を見に行った。幼馴染みで一つ下の勇太郎。そして、コート上の王様と呼ばれる飛雄。幼馴染みの勇太郎がかわいいのは勿論、天才と呼ばれながらも努力を惜しまず、口下手な飛雄が可愛くてたまらなかった。飛雄はコミュニケーション能力に欠けてるため、正直部活を引退する時、心配でたまらなかった。卒業の時も、皆と離れ離れになるのが云々とかよりも、飛雄のことが何よりも心配だった。私が二年生の時は及川さんと岩泉さんが飛雄をフォローし、私が三年生の時は引退し卒業した先輩たちに代わり飛雄をフォローしてた。勇太郎にも飛雄のことはお願いしてあるし、大丈夫と、自分に言い聞かせるように飛雄に大丈夫と声をかけた。
 でも、大丈夫ではなかった。
 県予選、決勝で、飛雄はチームメイトに見限られた。第一セット、相手チームのセットポイントの時、飛雄が上げたトスの先に誰もいなかった。そして飛雄はベンチに下げられ、試合に戻してもらけることはなく、北川第一は敗退した。

 試合が終わり、私は北川第一のいる元へ行こうと観客席を離れたが、私は飛雄たちの元へ行くことができなかた。卒業し、チームを離れた私が行って、なんて言葉をかける?大丈夫、そう言って私は卒業したのに、私は飛雄を一人にさせた。もっと、私に出来ることが他に何かあったんじゃないか、そう思うと足が動かなくて、私はその場にうずくまり声を上げて泣いた。



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