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短編集【庭球】

第73章 エンドロールをぶっとばせII〔ジャッカル桑原〕*


がば、と私を組み敷いて、私の唇をゆっくりと指でなぞるジャッカルの瞳はあまりにもまっすぐで、口にしようと思っていた非難の言葉をみるみる溶かしてしまう。
黙っておけばわからないものを、律儀に自己申告してくれるところは彼らしいと思う。
セックスのためだけに甘い言葉を駆使する男は数多く見てきたけれど、ジャッカルの言葉はそのどれとも違った。
そう思ってしまうのは惚れた弱み、だろうか。


「幻滅した、か?」
「…ううん」


恥ずかしいけど嬉しい、と小さく続けると、言い終わらないうちに強く抱きすくめられる。
そのまま突き込まれた大きな熱は、覚悟していた以上の快感と圧迫感で、声にならない声が喉の奥で潰れていく。


「お前の中に入ってんの、すげえ嬉しいよ。こうなったらいいなってずっと思ってたからさ」


ジャッカルはそう私の耳元で囁いて、額に触れるだけのキスをくれた。
ゆっくりと始まった律動は、それだけで達してしまいそうになるくらいで。
愛されているという実感が私の身体をさらに敏感にして、きゅうきゅうときつく締めつけながら、その大きさや形を嫌でも意識してしまう。


「あ、あっ…ふッ」
「…大丈夫、か」


自分だって大概苦しそうな顔をしているくせに、それでも私の心配をしてくれるのか、この人は。
嬉しくて愛おしくて、ジャッカルのすべてが欲しくて、けれどこの気持ちを余すことなく伝える術を私は知らなかった。
彼の引き締まった腰にきつく脚を絡めて、首に腕を回してキスをねだる。
少しでもいいから伝わってほしいと願いながら、ん、と落ちてきた柔らかい唇に自分のそれを重ねた。


「なあ…」
「んっ…、な、に…?」


激しさを増す抽送のたび、ベッドが大袈裟なくらいに立てるギシギシという音にかき消されそうになるほどに、唇へ直接降ってきた囁きは小さなものだった。
与えられ続ける快感に、もう限界が近い。
止めることのできない喘ぎの隙間、なんとか言葉を返す。
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