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短編集【庭球】

第73章 エンドロールをぶっとばせII〔ジャッカル桑原〕*


ジャッカルが空いた手で、バスローブの腰紐を見せつけるようにゆっくりと解いていく。
それだけでお腹の底がぞくりと疼くのは、バスローブ以外何も身につけていないと知られたらどうなってしまうのだろうという気恥ずかしさからか、それとも期待によるものだろうか。
あるいは、頭が忘れてしまっているだけで、身体は昨夜の行為を覚えているからなのかもしれない。
私の身体を上から下へと縁取るようにガウンを剥ぎ取る、うやうやしささえ感じられるくらい丁寧な手つきに、悦びのような感嘆のような吐息が漏れた。
ジャッカルは昨夜も、こんなにも大切に抱いてくれたのだろうか。


「…え」


衣擦れの音が床にたどり着いたのと同時、ジャッカルが目を見開いたのを鏡越しに確認して、体温が一気に上がる。
少しの間詰めていた息と一緒に吐き出された「反則だろ…」という呟きは、少しかすれているのにひどく湿度を帯びていて。
彼のこんな声を聞いたのは初めてだと思ったら、これ以上はないというくらいにどきどきしていた心臓がさらに高鳴ってしまう。
私の中心はひとりでにひくひくと蠢いて蜜を垂れ流していて、まるで制御することのできない何か別の生きもののようだった。


「…ね、ジャッカル」
「ん?」
「お願い、ベッド行こ?」


ここだと恥ずかしすぎて死んじゃう、と続けると、ジャッカルは薄く笑って「ん、そうだな」と頷いた。
その表情に少し残念そうな色が滲んだことにはもちろん気づいたけれど、そのご要望にはまた次の機会に応えることにしよう。
「次の機会」があることの幸せを噛みしめながら、初めて──あえて初めて、と表現しようと思う──は、鏡越しにではなくて正面からジャッカルと向き合いたいから。
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