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短編集【庭球】

第7章 就活ブルー〔跡部景吾〕*


そんなことない、と言葉を継ぎかけた唇を、また塞ぐ。
背中に手を差し入れて抱き起こし、纏っていたものを脱がせた。
皺がついたスーツは、渚には似合わねえ。
どちらのものかわからない唾液が渚の顎を伝い落ちていくのを確認すると、俺はベッドから降りて、脱がせたスーツをソファまで運ぶ。
もっと可愛がってやるかとベッドに向かうと、渚が恥ずかしそうに小さくなっていた。

「どうした」
「や、下着が…かわいく、なくて」
「あぁ? よく見せろよ」

ぎこちなく胸を隠していた腕をどかせると、ベージュのつるりとした下着が現れた。
普段はピンクだの黒だの、花柄模様のレースがついた下着が多い渚にしちゃ、確かに珍しいセレクトかもしれない。
珍しい色だな、と言った俺に渚はこんな色オバさんみたいだよね、と顔を赤くして。
シャツに下着が透けるのが嫌だったから、とうつむいた。
他の男共には渚の下着姿なんざ想像もさせたくないから、その努力は嬉しいのだが。

「ババくせえなんて、ンなこと気にしてたのかよ」
「だって、やっぱり可愛い下着で会いたいもん」

景吾には可愛いって思ってほしいから、と顔を赤らめながら上目遣い。
確信犯なのか何なのか。
下着姿と同じくらいに、渚のこの顔を、表情を、誰にも見せたくない。

「これはこれでエロいぜ、充分」
「えっ」
「本当はこんなことする予定じゃなかったのに、って感じがしてよ」

素肌が触れているところから、渚の体温が上がったのがわかった気がした。
やだ、景吾のエッチ、なんてぼやいてるが、聞こえないふりをしておく。
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