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君を俺だけのものにしたい【Mr.FULLSWING】

第10章 子津の場合


暗がりで人目の無い中、いつの間にかこんなに××さんとの距離が近くなっていた。
隣の席より近くで××さんの顔を見つめることが出来る。
少し赤くなった頬に、柔らかそうな唇。
目の前のこの人は僕の彼女なんすよね。
つまり××さんの「特別」を独り占め出来るわけなんすよね。
そしておあつらえ向きに××さんの後ろには壁なんかがあるわけで。
少し開いた唇は僕を誘っているように見えた。


「どうしたの?」
「美味しそうな唇だなー・・・って・・・!?」
気付いた時にはすでに思っていた事を口にしていて。
××さんは何とも言えない驚きの表情をしていた。
「・・・子津って意外とそういうこと考える人なんだ?」
「あああああああごめんなさいっす!その!変な事考えてて!」
時既に遅し。穴があったら入りたい。
何を言っても過去は変えられない事は分かっていて、僕は言い訳することを諦めた。
「子津ってムッツリなの?」
「・・・そうみたいっす。」
図星をつかれて意気消沈する。
恥ずかしいやら申し訳ないやらで××さんの顔を見れない。この体の熱を沈めるために川に飛び込もうかと本気で考えた。
「子津ってムッツリなんだー。へぇー。ムッツリー。」
「茶化さないでくださいっす!」
××さんが小学生のいじめっ子ばりにムッツリを連呼するので、僕はさすがに文句を言った。

はぁ・・・幻滅させてしまったっす。
「キスしたい」ならまだしも「美味しそうな唇」だなんて・・・変態じゃないっすか。
カップル初日にいきなりこんなのなんてあんまりっすよ・・・。
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