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びゅーてぃふる ❦ ふれぐらんす【気象系BL】

第1章 かりそめの遊艶楼


"お引き取りを"と続けて閉められそうになったところ


「…あ、名刺渡すわ」


確かこれで入れてもらえるとか

そよそよ吹く風に茶色い髪をサラサラ揺らしてその男性は俺の名刺をとった


「…楼主に確認して参りますので、ここでお待ちを」


くぐもった声を印象的に残して奥へ行ってしまった

閉じられた扉の近くには判りにくく書かれた"遊艶楼"(ゆうえんろう)という3文字…秘密クラブの名前かとも思ったけど

そもそも一見さんお断りとか

あれ…場所間違えたんかな


「お待たせ致しました
遊艶楼になる以前、ご利用いただいていたようで楼主に確認がとれました
櫻井様スーツですね、はいでは…どうぞ中へ」


俺はご利用した覚えないんだが…きっと父だな

確認から、どうやら服装の縛りもあるシステムのよう

促されるままに入った建物内はなんだかすごい和な雰囲気で、俺が先程まで見てきた世界とは違う装いに驚いた

キョロキョロと辺りを見ながら足を進め
何やら部屋に通されるとそこはもう異空間だった

赤い格子がいくつも並んで
その1つ1つに20歳にも満たなそうな美しい少年達が着物姿で座っている

まるでタイムスリップしたかのような、現代とは掛け離れた光景


「何…これ」

「好きな魅陰(みかげ)をご指名ください」


目を見開いている俺に動じず、柔らかい表情で告げる茶髪の男

なんだそれ、指名しろって…


「櫻井様」


格子の中から、聞かされたんだろう俺の苗字が飛び交う

手を伸ばして訴える目
この子達はきっとそういう教育を受けてる

なるほど昔でいう遊郭のような処なのか
今でも実在してる場所があるなんて

これは…秘密クラブより面白そうじゃん


「…これで全員?」

「いえ、別の部屋に太夫がおります」


太夫は今でいうナンバーワンか
稼ぎ頭なら、さぞお高いんだろうな


「どこにいる」


"ご案内します"と連れていかれた部屋には
魅陰以上に艶やかな風貌の太夫と呼ばれる男がいた


「指名するよ」


買ってやる、お前を

男は未経験だったけど
やけに色っぽい垂れ目と穏やかな表情が俺を自然と興奮させた
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