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[名探偵コナン]マティーニにお砂糖を

第46章 ポアロにて/T様へ


「さくらさん?」
その声で我に返ると不思議そうな目をした梓さんがこちらを覗き込んでいる。
「…っ梓さんの聞き間違いじゃない!?私と安室さんはそんなんじゃなくて、」
否定の言葉を口にしようとした時、スッと視界に影がかかった。

「僕が何です?」
疑問符を浮かべながら小首を傾げる安室さんの顔を見て、私はこの面倒ごとを彼に押し付けることに決めた。私の部屋を観察していたささやかな仕返しだ。

「ごめんなさい急用を思い出しちゃった!マスター、お会計お願いします!」
鞄を引っ掴むと急いで入口へ。そんなに急ぎなら送りましょうか?と後方から声がかかったが、聞こえなかったふりをしてポアロを後にした。





◻︎





「あ…さくらさん、読んでた本忘れて行きましたね。」
"号泣間違いなし!"と文字が踊るその表紙を見て、潤んですらいなかった彼女の瞳を思い出すとくすりと笑みがこぼれた。
「これ上がったら彼女の家まで届けて来ますよ。借り物らしいですから、ここに忘れたままじゃ困るでしょう。」

その本を受け取って自らの鞄に入れると、何かを言いたげな梓さん。
「どうかしました?」
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