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ごった煮短篇集

第3章 FF零式・エイト(切なめ)


「手伝いましょーか」

「いらない」

言いながら、エイトはなまえからの好意を無下にする。
そーですか、となまえは最前列の椅子に座ったまま、黒板消しで文字を消していく彼を見つめた。

授業終了後、当番であったエイトが黒板を綺麗にするのは知っていた。
そして、彼の背が低いということも知っていた。
だがそれが、こんなに面白いとは知らなかった。

ニヤニヤしつつ、なまえは背後からエイトを眺める。
背が低い彼は大きな黒板を隅々まで消すのは労力がいる。下方はどうにかなるが、上になるにつれて自分の背の低さを呪う彼の声が聞こえてきそうだ。

クラサメも、当番を知っているのなら譲歩してやってもいいだろうに。
もしかしたら、どこかで彼も存外面白がっていたりするのか。
なまえは頬杖をつき、再度声をかける。

「お手伝いはいらんかねー」

「だから、いらんと」

「女の子からの好意は受け取らなきゃ~」

ジャン!と登場したのはジャック。
また面倒なのが来たぞ、とエイトの顔が渋くなる。なまえは満面の笑みで出迎えた。

いつものニコニコ笑顔でジャックは人差し指を立て

「なんてったって、エイトは背が低いんだから~」

ズバリと言い切る。

さすがに、これにはなまえも苦笑して、おいおいとツッコミを入れる。
エイトは、細い眉をいつも以上に釣り上げて戦闘態勢に。これは危ないと思ったとき、またしても乱入者が。

「んなこと言ったら、ジャックよりも俺の方がでかいぜ?」

ナインが大股で近づいてくる。
ムッとしたジャックがエイトから黒板消しを奪い去り、上方の文字を消しにかかる。
「おい!」とエイトが取り返すより早く、次はナインが受け取る。

「僕の背丈でも間に合うんだからね~!」

「俺のが余裕あんだろコラァ!」

何だか無意味なことで言い争いを始めた二人だが、これは好都合。なんだかんだで当番を代わってくれているみたいだ。

なまえは良いように解釈し、エイトの手を掴んで人差し指を口元に寄せ、静かにするようジェスチャーで示す。
彼も意味はわかったと頷いたが、当番を他人に明け渡すのは気がひけるようだ。エースに続く優等生ぶり。

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