第6章 嫉妬2
「先生!トシは!トシはァ!!大丈夫なんですかァ?!?!」
「んー。過労ですね。大丈夫ですよ。寝てりゃ治ります。」
布団にぐったりと横たわる土方さんの枕元で涙目になっている近藤さんに対して、往診に来た医者はとても冷静だった。
私は土方さんの額に乗っている手ぬぐいを取った。
触れていた部分が熱い。
それだけ熱が高いということだ。
私は手ぬぐいをもう一度桶で冷やし、固く搾ったそれを、また土方さんの額に戻した。
高熱の割には穏やかな顔をして眠っている。
普段は瞳孔が開き気味の切れ長の目は閉じられていて、その顔を私は初めてまじまじと見つめた。
(……まつ毛なっっっが!!肌きれい!え、私こんなイケメンというより美人にキスされたんだ…………)
必死にポーカーフェイスを貼り付けているが、内心ドキドキが止まらず、いい年こいて彼氏でもない男にキスされて動揺している。
もしかして、土方さん…
私のこと…………
いやいやいや!ナイ!断じてナイ!!
こんな、【女なんて腐るほど寄ってきます】って感じのイケメンが私のことを好いているなんて天地がひっくり返ってもありえない。
あれはきっと誰か他の女性と間違えて、
(あ、でもこはるって言ってたな……)
違う違う違う!やめとけ、期待すんなこはる。
傷付くのはお前なんだぞ!
どうせどこか別の【こはるさん】と間違えたんだよ。
うん、絶対そうだ。