• テキストサイズ

【おそ松さん】哀色ハルジオン

第14章 優しさの罪





だんだんと、自分の存在意義が分からなくなっていく。


僕は優秀であってはならないのか?他の兄弟と同じレベルでなくてはならないのか?


どこで間違ったのか?そもそも僕は間違っているのか?


分からない。


分からない。


そのうち、兄弟が僕とその周囲の異変に気付き始めた。


僕に心ない言葉をぶつける奴には、必ず誰かが仲裁に入って相手を宥めてくれた。


きっと本当は殴りたかったんだと思う。でも誰もそうはしなかった。そしてそれはきっと、僕のため。


僕が勉強を頑張っていることを、兄弟は全員応援してくれていたから。「俺たちの分までよろしくな!」なんて軽口も叩いていたけど。


下手に暴動を起こして、僕の内申に響かないように。…みんなは、本当に優しい。


3年生になって、進路を決める時期が迫ってくる。 しかしその頃には、


暗い感情の矛先は僕にではなく、


僕を庇う兄弟に向けられるようになっていたんだ。


周りの奴らは手のひらを返したように、兄さんたちを罵倒する。


優秀だと教師に称賛される僕が妬ましかっただけだと…そっちのほうが断然マシだった。


僕なんかを守ろうとしてくれる、その気持ちだけで十分だった。


でも、みんなは優しいから。


…こんな事態になって、ようやく気付く。


ああ、僕に圧倒的に足りないものは、¨これ¨なんだと。


¨誰かを思いやり、守ろうとする優しさ¨


僕は自分のことしか考えていなかった。いつだって、自分、自分、自分、自分。


自分はこうあるべきだ、


自分はみんなより劣っている、


自分には何もない、


だから自分は努力しなければ。


…そう…この繰り返し。


何を1人で焦っていたのだろう。何に怯えていたのだろう。


どうして僕は、


ありのままの¨僕¨を受け入れずに、


変わることばかりに執着したのだろう。


…そして、もう1つ。


僕がおそ松兄さんに憧れる、最たる理由は、


僕に足りない¨思いやりと優しさ¨を、兄さんが一番持っているからだ。






***


/ 236ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp