第11章 軋み始める関係
「え、に、にやけてました?あははは…」
「どーせ売り上げとか1位の賞品のことでも考えてたんじゃない?あんた分かりやすいからねぇ」
「え、エスパー!?」
「はいはい、どうでもいいけど交代。入り口に立って最後の呼び込みしてきてよ。そういうのあんたの方が向いてるからさ」
「え?う、うん、分かった」
言われた通りに店の入り口に立つ。文化祭も終わりに近付いているせいもあり、昼時にはあんなに賑わっていた廊下はほとんど人がいなかった。
こ、これでどう呼び込みをしろと…とりあえず前を通りかかった人に声をかけてみようかな。あまり大声を張り上げるのもなんか違うだろうし。
誰か来ないかなー、とそわそわしながら待っていると、廊下の突き当たりを曲がってきた人物と目が合った。
よかった、やっと人が…
…あれ?
こちらに向かって歩いてくる、一人の男子生徒。近付いてくればくるほど、その姿が鮮明になっていき…
誰なのか確信が持てた時には、私はその場からすでに走り出していた。
「…!おい!」
追いかける足音が聞こえる。でも私は振り返らずに必死に走った。
…まだ、まだ会いたくない…!
どれだけ後悔したとしても、この気持ちをうまく伝える言葉が、私の中でまだ見つかってないから。
だから、ごめんなさい…!
階段を駆け上がる。ただでさえ1日中立ち仕事をしていた体はもう限界で、走るスピードが次第に落ちていき…
「…こ、の…ッ止まれ、馬鹿!」
「!きゃあッ!?」
屋上へと続く階段の踊り場で、私はとうとう捕まった。
離れないように右腕を拘束される。息を荒げながら観念して顔を上げると、同じく肩で息をするイッチーがそこにいた。
「…っお前…なんで逃げんの」
「なんで、って…」
どうしよう…イッチー、怒ってる。
そうだよね…顔見ただけでいきなり逃げられたら、誰だって…
でも、私だってイッチーに避けられたことあるのに。こんなの…不平等だよ。
「…何、その顔。なんか不満なわけ?」
「!…」