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猫王子と犬平民

第16章 猫王子と怪我人


『何で…なんでっ!!!』


だった。周りにはいくつものボールが転がっている。その中では制服のまま下を向いて立っていた。


「…」

『っ!!!誰!?…って、赤司か』

「泣いて、いるのか…?」

『は?泣いてないっつーの。練習はもう終わりー?』

「あぁ…」


泣いてないと言うが、絶対に泣いている。こちらを見ようとはしない上、声が震えている。


『あたしももう帰ろうかなー。じゃぁな、赤司』


帰ろうと口にするものの、一向にその場から動こうとはしない。多分、僕が帰るのを待っている。


『…何、帰んないの?』

「いや、帰るよ」

『あっそ。ばいばい。………って、帰んないじゃん』

「帰るさ。と一緒に」

『は?あたしはまだやる事があるから。先に帰ってな』

「僕も手伝うよ」

『は!?いいよ、あたしの仕事だし』

「2人でやった方が早い。まずはこのボールを拾えばいいのか」

『っやめろよ!!!!』


は怒鳴った。相変わらず、僕の方は全く見ようとはしない。


『やめろ!なぁ、頼む。もう帰ってくれ…』

「だから、一緒に帰る」

『だからやめてくれって言ってんだろ!?…ねぇ、お願い…帰ってよ…』

「…断る」

『っ何で!?何でなんだよ!!赤司がここに残る理由なんてないだろ!?頼むから1人にさせてよ…』

「…1人になれば、はまた独りで泣くんだろう?」

『っ!!!!』

「だから僕はを1人にはしない」



はギュっと拳を握ると、近くにあったボールを投げて、サーブのように打った。
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