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猫王子と犬平民

第11章 猫王子と文化祭


「…今日は何だか大人しいな」

『…まぁね。少し考え事』

「そうか。僕で良ければ相談に乗るぞ」

『赤司って普段は王子なのに、こういう時だけ優しいよね。さすが主将様』

「これは怒ってもいい所なのか」

『褒めてるんだよ。…大丈夫、そんな重い話でもないし。ただ、洛山に入学して良かったなぁって思ってた』


の隣に立ち、の視線を追う。そこには楽しそうにダンスを踊るたくさんの生徒がいた。


『ほら、あたしって東京出身でしょ?京都に親戚とかいないし、土地も知らない。多分、奈央とかに話したら笑われるかもしれないけど、不安でしょうがなかったんだ』

「…少し分かる気がするよ。僕も同じ境遇だからね」

『そうだね。けど、今では洛山に入学して良かったって思ってる。バレー部の人達は良い人ばかりだし、クラスメイトにも恵まれた。奈央にも、赤司にも出会えた』

「…」

『って、なーに言ってるんだ、あたしは。王子、まだ後夜祭続くみたいだから行ってきなよ』

「お前はどうするんだ」

『あたしは行かないよ』

「なら僕も行かない」


いつもギャーギャー騒いでいる分、こういう静かな雰囲気は新鮮で僕の心を動かし続けた。


『えー?せっかくの祭りなのに?』

「それはも同じだろう」

『そうだね~。あ、それなら明日の祭り、一緒に行かない?』

「…は?」

『奈央から聞いたの。明日最後の遅い祭りがあるんだって。奈央は用事があるから行けないみたいだし。明日部活午前までなんでしょ?バレー部もなんだ』

「…僕で、いいのか?」

『いいから誘ってんじゃん。で、どうよ』


…やばい。これは夢だろうか。願望が妄想として出て来たわけでは…ないよな。だがせっかくのからの誘い。断る理由がない。


「行かせてもらうよ」

『よっしゃ!じゃあ明日夕方6時に寮のホール集合ね~』

「」

『んー?』


はにかむ様に喜ぶを見て、僕の心臓はハイスピードで動き続ける。気が付けばの名前を呼んでいた。
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