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雪の華【気象系BL小説】

第2章 始まりのキス


ー翔sideー


雅紀「影山さん送ってもらってありがとうございました」


影山「とんでもございません」


「雅紀今日はありがとな」


車の窓ガラスを下げ顔を覗かせる。


雅紀「ううん。じゃあ明日学校でね」


「うん。また明日」


影山「失礼します」


影山が車に乗り込み、発進する。
見えなくなるまで雅紀はこちらに向かって大きく手を振っていた。


「ははっ、小学生かよ…」


雅紀が居なくなって車内に静寂が戻る。
ぼんやりと町並みを見つめながら今日の出来事を思い返していた。


無意識に…そっと唇に触れる。
あの人の笑顔がまた脳内を覆っていた。


影山「翔様どうかされましたか」


「え?」


我に返り、バックミラー越しに影山と目が合う。


影山「いつもと雰囲気が違うものですから」


「いやまぁ…美大の学際なんて初めてだったから圧倒されてさ。ほら、俺絵心無いじゃん」


影山「そうでございますね」


「おい。オブラートに包めよそこは」


影山「失礼致しました」


「ふふっ、もう…毒舌執事め」


いつもの影山の毒舌に笑ってしまう。


主を正しい方向に導くのが執事の仕事だけれど…この影山はハッキリ物を言い過ぎる。
でも…影山だからかな。
彼の言う事は素直に聞ける。
それに影山は優秀だから…返す言葉も見つからない。


「なぁ影山」


影山「はい」


「………影山は結婚する気は無いの?」


影山「私の使命は櫻井家に生涯の全てを捧げる事。それ以上でもそれ以下でもございません」


「それでももし…誰か…人を好きになったら…」


影山「櫻井家にお仕えする事を決めた時、そういう気持ちは全て置いて来ました。なので…一切ありません」


きっぱりと影山は言い切る。


「そっか…」


影山「翔様。この影山に嘘は通用致しませんよ?」


「え?」


影山「学園祭で何かあったのでございましょう?」


「………」


俺は黙ってうつ向いた。


影山「翔様。私は櫻井家にお仕えする身。その主に言われております。『翔を頼む。息子を支えてくれ』と。私は…そのご命令を全うするつもりでございますよ」


「………影山…」


バックミラーに映る影山の瞳は…優しい眼差しだった。


「………あの、さ…」


俺はゆっくりと口を開いた。
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