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【刀剣乱舞】守護者の恋

第9章 本当の名前


「大将、加州があの狐の扱いに困っているんだけど」
端的な薬研の言葉。
審神者の部屋に残っていた束穂は、僅かに体をびくつかせる。
「まあそうだよなあ。わかった。一通り説明が終わったら、ここに小狐丸を寄越しておくれ」
「加州は?」
「うーん」
審神者はちらりと束穂を見る。
が、どうしてよいか彼女穂自身も困ったような表情を浮かべるだけ。
「束穂。小狐丸と話があるだろう」
「そうかも、しれません」
「それは我々が聞くべきことではないような気がする。でも、君たちの関係は隠しておけない。わたしからみなに説明をしておくから、君は小狐丸を離れに連れて行って話をするが良いよ」
「えっ」
束穂は焦ったような声を出した。
「ここで話したら落ち着かないだろう」
「確かにそうですが」
「それとも、誰かが一緒の方が良いかな。二人きりは嫌かい?」
「わたしの、心の準備が」
二人の会話を聞いて、ほとんど意味がわかっていない薬研がずばりと核心をついた。
「その心の準備ってやつはどうせいつになっても出来ないぜ」
「薬研さん」
「よくわかんないけど、大将が今そうしろっていうなら、今した方がいいことなんだろ。遅くなればなるほどきっと面倒なことになる」
束穂は立ったままの薬研を見上げた。それから観念したように
「薬研さんは、本当にいつも」
とうめく。
「ははは、余計なこと言ったかな」
「いつも正しくて、困ります」
「正しいかな?」
そう言って薬研が審神者を見れば、審神者は苦笑いばかり。
早い時期から本丸にいる薬研は、今までもずばりと彼女に「きついけれど本当のこと」と口にしてきた。そして、それらは全てが彼の優しさからのものだ。
「わかりました。二人で話をさせていただきます」
束穂ははっきりと審神者にそう告げた。
逃げたいという思いは強かったけれど、逃げられないということもわかっている。
いくつかのキーワードから「なんとなく」を察した薬研は束穂に近づいて、頭をぽんぽんと軽く叩き
「頭巾で見えないけど、わかるぜ。そんな決死の形相で言わなくとも。なんの話をするか俺っちは知らないから無責任なことを言うようだけど、あの狐は悪いやつじゃないんだろ」
「はい」
「なら、大丈夫だな」
その適当な薬研の言い草に、つい束穂は「ふふっ」と笑い声を漏らした。
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