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カラ松事変(完結)

第6章 生命


また黒い夢。

瞼の裏の真っ暗な夢。

独りは怖いよ。

いや、俺は独りじゃない。

ブラザー達がいる。

「カラ松兄さん……」

「!!」

また聞こえる声。

泣くな。

今ならわかる。

この声は、一松だ。

俺が一松に言わせた、
俺の好きな言葉。

弟が兄に「兄さん」と呼んでくれる、

それだけで幸せなんだよ、一松。

一歩踏み出す。

紫色の泣き虫がいた。

俺の名前を呼んで泣いている。

俺を頼って泣いている。

赤の他人じゃないなら尚更だ。

待ってろ。

助けてやるから、

守ってやるから。

俺は一松を後ろからそっと抱き締めた。

「一松」

静かに名前を呼んだ。

最愛の兄弟の名前を。

「カラ松兄さっ……」

振り向いた一松は眼を腫らして泣いていた。

「泣くな、俺は一松の側にいる。」

「ほんとにっ…?

もういなくなったりしないよな?」

「あぁいなくなったりしない。ずっと一緒だ。」

一松は俺の背中に腕を回した。

***

やがて一松は口を開いた。

「………泣いているのは俺だけじゃないから。」

「ん?」

「行けよクソ松。俺達は6つ子。兄貴を頼る弟は俺だけじゃないから。」

一松は笑ってた。

なにかが吹っ切れたかのように。

「あぁ、そうだな。ありがとう一松。」

俺は走った。

ブラザー達のために。
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