第1章 ・始まり、再
ここへ丁度文緒の義兄、若利と同じ男子バレーボール部で3年1組の瀬見英太が通りかかった。
「何やってんだよ、天童。」
マイクよろしく文緒にスマホを向けているチームメイトの天童覚に瀬見は渋い顔をする。
「あ、英太君。」
「瀬見さん、こんにちは。」
「おう。んで、天童は文緒巻き込んで何やってんだ。」
「インタビュー。」
「何でそんな阿呆な事始めたんだよ。」
溜息をつく瀬見に天童はへらっと笑う。
「練習だよ練習。若利君がスターになったらさ、文緒ちゃんとこにもインタビュー来るかもしんないじゃん。」
「意味不明だわノリだけで実施すんなご丁寧にスマホの録音アプリまで使うな、文緒もうかうか乗っかるな断れよ。」
「断ったのですが」
文緒は恥ずかしそうに目を伏せた。
「なかなか引き下がってくださらなくて。」
瀬見はじろりと天童を見つめる。
「お前なぁ。」
「いーじゃん別にいじめてんじゃないしさ。」
「当たり前だ、若利にぬっ殺されたいのか。文緒お前も物理的に逃げるとか何とかしろよ、相手が天童じゃなくてもっと面倒くさくて悪い奴だったらどーすんだ。それだから若利が過保護になんだろ。」
「ご心配をおかけして申し訳ありません。」
「英太君、それって俺が面倒くさいって事。」
「さぁな。」
「流したっ。」
まぁそれはともかくと瀬見はため息をつきながら言った。
「阿呆はその辺にしとけよ。あ、文緒、そういや若利がお前探してた。」
「あら、何て事。メールもらっていたかもしれません。」
文緒はスカートのポケットからガラケーを取り出して確認する。
「あ、メール来てる大変。お2人とも申し訳ありません、私は失礼します。」
「おう、行って来い。」
「まったねー、文緒ちゃん。」
文緒はぴょこんと立ち上がり一礼して、パタパタと走り去ってく。ロリータ呼ばわりされるのが悩みであるというその姿を見送ってから天童がうーんと唸った。
「何唸ってんだよ。」
瀬見が尋ねると天童はいやさ、と言う。