第46章 ・年越し
「兄様、」
やがて文緒が口を開く。
「細かくお話しした事がなかったのですが私ここに来るまでは本当に調子が悪い時ばかりでした。」
若利はハッとして義妹の目を見つめ、義妹は静かに語る。
「小学校の時からよく風邪を引きましたし、風邪でなくても胃腸を壊したりしていました。」
「そうか。」
「高校になってからも咳が多くて医者にかかってました。」
「そうか。」
「でもこのお家に来て白鳥沢に通うようになって慣れていくうちにそういうのが治まったんです。」
「確かにそういった話をチームの連中からも聞いた事がない。走った時に軽く起きているくらいか。」
「不思議なものです。」
「ああ。」
確かにと若利は頷いた。
「メカニズムなどは全くわからないがお前がここに来た事が作用しているといいと思う。」
「はい。」
言って義妹はモゾモゾと身動ぎし、若利もまた義妹を抱え直す。
「聞くまでもないとは思うが」
義妹の耳元で若利は呟いた。
「今お前は心穏やかでいるか。」
義妹はにっこりと笑った。
「はい、兄様。」
ならいいと若利は義妹の頭を撫でてそっと目を閉じる。義妹の温もりがじわりと染み込んでくる気がした。