第3章 ・心配性
1-4の奴らは多くがニヤニヤとしながら五色は顔を真っ赤にして見つめる。普通に考えたらかなり恥ずかしい図だ。しかしここで更に若利はやらかした。
「リボンが曲がっている。」
「え、あの兄様。」
戸惑う文緒を他所に若利は義妹の制服のリボンに触れて曲がっているのを直し始める。
「あの、兄様、自分でやります。」
流石にたまりかねた文緒が言うが若利はじっとしていろと取り合わない。やや強引にリボンを直してやり、ついでにそっと自分が贈ってやって以降文緒が首から下げているペンダントのボールチェーンにも触れた。一度そっとチェーンを引いて真っ直ぐにしペンダントトップを上着の内側に入れ直してやる。顔を真っ赤にして文緒が困っている事もクラスの奴らが凝視している事も全く気付かない。
「これでいいだろう。」
「あ、ありがとうございます。」
「俺は行く。」
「はい、また家で。」
「ああ。」
文緒の無事を確かめられて満足した若利は邪魔したなと呟きまたノシノシと3-3へ戻っていった。
若利の姿が見えなくなってから文緒が珍しくあああああと大きな声を上げた。
「何て事、心配してくれるのはいいけどまさかあそこまでやるなんて。いくら何でも恥ずかしい。」
両手で顔を覆う文緒に1-4の連中は多くが笑い、出た何て事とかやっぱり嫁じゃねーかとかいいなあ文緒さん羨ましいとか好き勝手を言っている。加えて
「ふ、不謹慎だぞっまだ日も高いのに学校でっ。」
やはり顔が赤いまま五色がガターンッと立ち上がって文緒を指差した。
「それは私じゃなくて兄様に言って。」
お願いだからという意味合いを込めて文緒は呟いた。