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【文豪ストレイドッグス】黒い世界に生きる少女

第1章 少女の過去


ある日、洗濯から帰る途中、土手で芥川を見つけた。
彼は数万円の札を持って立ち尽くしていた。
なにをしているのかと思い、よく見てみると、あることに気がついた。
芥川の足下に転がっているものはーー

ーーバラバラになった人間の肉片であった。

声にならない悲鳴が喉までかかる。思わずしゃがみこんだ音に気がついたのか、芥川はくるみに近づいた。

「…何をしている?」
「……」
芥川はため息をつくと、隣に腰をおろした。

「僕が怖いか?」

そう発した彼の口調はとても柔らかく、また、どこか憂いを含んでいた。寂しそうだった。
黙り続けるくるみを見て肯定と受け取ったのか、かれは再びため息をついた。
「だろうな…。確かに気持ちの良いものではない。…だが、僕にできることはこれしかないのだ。いつも僕と共にいてくれるあいつらを守るために、僕ができることは金を稼ぐこと。…汚れた金だがな。」
そう言って芥川は自嘲的に笑った。
「お前は、怖いと思うなら僕に近づくな」
突き放すような芥川の言葉。だが、そういう彼の横顔は、あまりに悲しく、切なげで……。宙を見つめる黒い瞳は、決して濁ってはいなかった。
立ち上がろうとする芥川を、私は反射的に止めていた。

「あ、あの!怖く…ないです‼︎」
「…何?」
「ありがとうございます!その、いつも、支えてくれて…」
芥川は、何か変わったものでも見るように瞬きを繰り返していたが、やがて表情を和らげた。

「人に…何かを感謝されたのは初めてだ…。おまえ、名前は?」
「あ、えっと、乾くるみといいます!14歳です‼︎」
「くるみか…。僕は芥川龍之介。齢十五だ。」
「芥川…さん。」
芥川は目を細めて微笑した。くるみは初めて、彼の本当の笑みを見た。貧民街きっての殺人機械と呼ばれる芥川との、運命の出会いであった。
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