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ある一週間のこと

第6章 六日目




今日は特別にジェイさんからお休みをもらった日。
ついつい、夕方まで寝てしまったが、今日こそミリィちゃんの誤解を解かなきゃ! いやまあ、誤解しているわけじゃないかもしれないけど。それでも、一応彼女に会って訊いてみないとわからないからね!

僕は夕食を簡単に取ると、パジャマからパーカーとジーンズといった動きやすい服に着替える。ふと窓の外を見ると、太陽が水平線の向こうに、半分だけオレンジ色の顔を沈めていた。きらきらと水面が宝石のように光り、白い泡が砂浜をレースのように覆っている。

海辺に降りていくと、砂浜に立てられた小さな小さな木製の小屋の前に、ミリィちゃんが座っていた。
お腹から、淡い青色をした鱗で覆われていて、どこからどう見ても魚の尻尾だった。肩から、薄くて質素なベールをかけていた。長めのベールなのか尾びれの真ん中ほどまである。

今の彼女はとても綺麗だと思う。いや、もちろん人間の時の彼女もとても綺麗だけれど。

人魚としてのミリィちゃんは、自然そのものの美しさというのだろうか。そこにはっきりと存在しているのに、どこか儚げで消えてしまいそうで。
ささやくような風の流れが彼女の深い青色の髪を揺らしていく。水晶のような水面と、灯りがつき始めた高台の町の間で、静かに座り込んでいる彼女は一つの絵画のようだった。

僕が声をかけるのも忘れて、彼女の姿を見ていると、ふとひときわ大きな波が彼女の尾ひれを濡らした。ハッとしたように顔をあげたミリィちゃんが、僕の気配に気付いたのか勢いよく振り返った。


「フィル……! って、きゃっ!」


ミリィちゃんが小さく悲鳴をあげたとき、ポンという音ともに彼女の尾ひれが人間の足へと変わった。
一瞬だけ時間が止まる。僕の思考がフリーズして、風がやむ。えっと、つまり今の彼女は、はだ…………


「うわあああああっ!?」

「きゃあああああっ!?」


お互いの悲鳴が砂浜に響き渡る。何を見たとか聞いたとかを判断する前に、僕は慌てて首を外して胸の前に抱えてしゃがみこんだ。
ミリィちゃんがバタバタと小屋の中に入っていく音がする。

僕はと言えば、ただひたすら「ごめんなさいぃぃ」と繰り返すことしかできなかった。



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