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ある一週間のこと

第4章 四日目




「あの、ジェイさん。今なんて……?」

「えぇ? だから、また会いたいなぁ、って」

「そ、そこじゃなくて! もっと固有名詞的なのが聞こえたんですけど」

「アンジェラちゃんのこと?」


や、やっぱり……! これって、どういうことなんだろうか。え?


「え、え? す、好きなんですか!?」

「どうかしらぁ? うーん、そうねぇ……やっぱり好きになるのかしら。そうね、好きよ」


なんの躊躇いもなくそう言ったジェイさんにぽかんとしてしまう。
こんなにもあっさりと言えるなんて、僕にはできない。そう思うと、ちょっとだけ羨ましくなってしまった。


「あらやだ。もうこんな時間じゃない。夜更かしは肌に良くないから、アタシはここで失礼するわぁ。フィル君も、早く寝なさいよ~。明日も仕事なんだから」

「は、はい」


少し照れくさそうにジェイさんが言うと、僕に手を振ってそのまま帰っていってしまった。
僕がぼんやりとその後ろ姿を見ていると、お店の路地の陰からアンジェラさんがそろりと出てきた。


「フィル君……」

「えっと、アンジェラさん?」


思わず疑問形になってしまうが、アンジェラさんは俯いたままだ。他の妖精や人を石にしてしまわないようにつけている専用のサングラスが、月明かりにちょっとだけ反射していつもより綺麗に見えた。


「あ、あたし……もうナイトメア来ないかもしれない」

「そうですか……寂しいですね」


そっか。もうアンジェラさんとも、なかなか会えなくなるんだなぁ。
そう思うと、タテマエだけじゃなくて、本当に寂しいと思った。アンジェラさんは、何か言いたげにしていたが、首を強く振って僕を正面から見つめてきた。


「そのっ……ありがとう、フィル君っ!」


満面の笑みでそうお礼を言ったアンジェラさんに、僕はほっこりとした気分で笑顔を返した。




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