第5章 ♦マイクが…
潤side
突然だが、俺は『歌』ってモンに自信がない。
相葉さんみたいに『That's アイドル』、みたいには歌えないし、ニノみたいな『独特な世界観』みたいなのを醸し出すことも無理。
ラップは…そこそこ出来るっちゃ出来るけど、翔さん程じゃない。
当然、大野さんみたいになんて、もう到底無理な話。
しかも、最近では大野さんと同じパートを歌うことが増えてきて、余計になんとかしなきゃな、って思ってはいても、気持ちばっかり焦って、結局空回り。
はぁ…
楽屋の片隅で荷物を纏めながら、ついつい溜息が漏れる。
「どうしたの? 溜息なんて吐いちゃって」
声の方へ顔を向けると、大野さんがニコニコ笑顔で立っていた。
う~ん、大野さんに相談してみようか…
いやいや… ちょっと待てよ…
「ねぇ、さっきから何一人で百面相してんの?」
百面相って…
俺、真剣に悩んでるですけど…?
「大野さんさ、この後開いてる?
もし開いてたら、ちょっと付き合って欲しいんだけど…」
「うん、いいよ♪」
大野さんを助手席に乗せ、車を走らせる。
「ねぇねぇ、どこ行くの?」
信号待ちの間、相変わらずのニコニコ笑顔で聞いてくるから、付き合って欲しい場所がある、とだけ返して、目線を車窓に戻した。