• テキストサイズ

青春メモリアル【短編集】

第10章 俺なら@菅原孝支




「——取り敢えず、ハイ。これ飲んで落ち着いて」

「…ありがとうございます…」


菅原から渡されたペットボトルのお茶を飲み、美心はふぅ、と息をついた。

「…で、どうしたんだ?」

急に体育館裏から飛び出して来た事。
そして、泣くのを我慢していた事。

菅原はそれを問うた。


「…さっき……」

美心は俯き、ポツポツと話し始めた。
















昼休みの事である。

美心は、影山のトスが崩れてきている事に気づいていた。
本人も、それは分かっていたのだ。

早く戻ってほしいと思った美心は、影山に「どうしたの?」と訊いた。

すると、「お前には関係ない」と返されたのだ。




「私…心配してたんです。
飛雄くんが苦しい時には支えてあげたい。一緒に悩ませてほしいって思って。なのに……」

「桐谷…」


菅原が名字を呼ぶ。すると、美心はまたひと粒涙を流した。

「桐谷…そう、飛雄くんも名字で呼ぶんですよ。私は名前で呼んでるのに……恥ずかしいけど、ちょっとは彼女っぽいからって。…なのに…っ」


ずっと言えなくて、ずっと気づかれなかった思い。
内気で夢見がちな少女の欲心を、菅原はじっと聴いていた。



「…桐谷、ちょっと座って」

「?…はい」

すぐ傍のベンチに腰掛け、溢れ出る涙を拭う。

菅原は美心と向かい合わせにしゃがみ、目を見つめて言った。

/ 145ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp