第2章 青林檎@及川徹
それは唐突に起こった。
俺のありがたい被害妄想なのか、それとも本当に起こったことなのか…よく分からない。
ともかく、廊下の角を曲がると華やかな空気へ変わり、花のように美しい彼女が教室の前に佇んでいた事に気付いた俺は、死角になる場所で小さくガッツポーズをした。
彼女——桐谷さんは、特に目立つもののない大人しい人だ。
この俺にも近づいてくることはなかったから、俺は彼女をよく知らなかった。
関わりも特になかった彼女を好きになっなのは、ついこの前の事。
彼女が、髪をバッサリと切った時だ。
俗に言う「一目惚れ」というやつか。長かった髪は肩までになり、前髪も出来て初めて見えた端正な顔立ち。白くて綺麗な肌。頭にちょこんと付けた、赤いリボン。
その日から、彼女には『白雪姫』というあだ名がついたのだ。