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僕の大型鰐

第4章 報告


トントン、と肩を叩かれて振り返ると、見覚えのある青年が立っていた。
「………シャル!!?」
ロビンは思わず資料を落とし、口元を押さえた。
「覚えててくれたの?嬉しいなぁ。すっかり美人になったね、"オールサンデー"ちゃん」
能力で落とした資料を集め、シャルラを見上げる。最後に見た時と変わりのない姿がそこにあった。

数年前。
海軍に見つかり、行動を共にしていた海賊を盾に小舟で逃げていた時だった。
突然波が荒れ、目の前に巨大な海王類が現れた。
「っぁ………」
急な出来事に、まだ少女だったロビンは腰を抜かして小舟にへたりこんだ。首長竜のような姿の海王類はロビンの体の何十倍もある頭を海上に出してこちらを見ていた。全長がちょっとした海賊船一隻分あってもおかしくはない。ロビンはあまりの迫力に声を失い、ガタガタと震える。ふいに海王類がゆっくりと口を開けた。
「(食べられる………!?)」
咄嗟にロビンは目を強く瞑ったが、予想した衝撃が来ることはなかった。
恐る恐る目を開けると、そこには天使がいた。

というのは比喩だが。大きく口を開けた海王類の頭の上に、シャルラが立っていたのだ。美しい銀髪が太陽の光を反射してキラキラと光っている。人形のように整った顔立ちは、この世のものとは思えなかった。ロビンはきょとんとして、まばたきを繰り返した。
「大丈夫かい?」
「あ……うん」
彼が海王類の頭からロビンの小舟へ飛び降りた。人一人落ちてきたというのに小舟は少しも揺れなかったが、ロビンはそんな事に気付く余裕はなかった。
「お前の母さんはずーっと向こう。いい?そう、いい子だね。軍艦には気をつけな」
シャルラは海王類に話しかけていた。まるで迷子の子供にでもするかのように。
海王類はシャルラの指差した方向へと顔を向け、ゆっくりと進みながら沈んで行った。シャルラは胸を撫で下ろしてロビンに向き直った。
「……あの海王類、人の言葉がわかるの?」
ロビンの目から恐怖の色は消え、今は好奇心で輝かんばかりだった。シャルラは後ろ頭を掻いてロビンの前にゆっくりと腰を下ろす。
「あいつはね、おれの言葉がわかっただけさ。人の言葉なんてわかるわけないだろ」
「え、でも…同じ言葉なのに?それとも、あなた人じゃないの?」
「質問が多い嬢ちゃんだな。せめて一個ずつにしてくれよ」
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