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人外王の花嫁

第6章 蜥蜴の王


予想に反して、カサドラさんは私に酷い事はしなかった。ただ抱き締めるだけで、私が泣き止むと私をベッドへと戻してくれた。

私を寝かせたカサドラさんは、外の人へと声を掛けるとその人に持って来させたものを私のそばへと運んで来た。
そこには沢山のフルーツが載っていて、美味しそうなのだけれど…私は食欲が無かった。

カサドラさんが私を引っ張り起こし、クッションを背にベッドヘッドへと凭れさせた。そして切り分けられた果物を私の口へと運んで来る。

「食え」

私は食欲が無かったので、頭を左右に振った。するとカサドラさんが眉間に皺を寄せて低く唸った。

「…俺様が食えと言っている」

「っ…」

カサドラさんの怒りに体が反応すると、私は震えながら口を開いた。そこに果物が入れられて、何とか咀嚼して飲み込む。…味がしなかった。
それが何度か繰り返されたのだけれど、流石に限界で私は口を閉じて頭を左右に振った。

カサドラさんは小さく舌打ちして、果物を運ぶ手を止めた。

それ以降、カサドラさんが私の面倒を見てくれるようになった。立ち上がれない私は逃げられないと思ったのか、首輪も無くてカサドラさんの部屋で過ごしている。
お風呂とかのお世話も全部カサドラさんがしてくれて、移動する時は私を抱き上げて移動してくれた。仕事の合間にも私をそばに置いて、例え用事で離れても直ぐに私のそばへと戻って来た。




「なかなか上手く行かねーな…やっぱり何か育てるには日の光が無いと駄目なのか…」

そう部屋の中で一人愚痴るカサドラさんの話しに耳を傾けていた。返事を返さない私に構う事無く、時々こうやってカサドラさんは私に話し掛けたり愚痴を言ったりする様になった。

「あぁそうだ。今日は外に出たからな、土産だ」

そう言ってカサドラさんは私のベッドのそばに一輪の花を飾ってくれた。綺麗なお花。少し私が笑うと、カサドラさんは慌てた様に頬を染めて視線をそらした。

「た、たまたまだからな?!たまたま…綺麗な花が目に付いたから、それで…」

言いかけて口を閉じたカサドラさんの表情が優しいものへと変わった。最近のカサドラさんは何だか疲れているように見える。

相変わらずカサドラさんは怖いけれど、最近のカサドラさんは私を変に怖がらせる事は無くなった。

逆に、優しく感じられて戸惑うことの方が多くなっていた。
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