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人外王の花嫁

第5章 魔物の王


魔物の国のルナール様。

襟足長めの髪に大きな瞳。垂れ気味の目は何物にも興味が無さそうに宙をさ迷っている。一見見た目は美少年な容姿をしているルナール様はスライムと言う種類の魔物で、全身が水の様な透明な液体で出来ている。
一番多いのはスライムだけれど魔物の国の人達はスライムだけでは無くて他の様々な少数の力の弱い多種の魔物の集まりらしい。悪魔、獣、虫から外れた魔物がこの国に集まって人口は一番多いのだ。
基本平和主義なこの国は眠れる獅子なのだとお爺さんが言っていた。


「それではお部屋にご案内致しましょう。ほれ、様をお部屋にご案内しなさい」

メイドさんが歩き出す。ルナール様も参りますぞ、とナグル様に強引に促されてルナール様も渋々歩き出した。
キリヤ様から大量に持たされた荷物も一緒に運ばれる。案内される通路の側にも水が流れていた。チョロチョロと水の音がする。
神殿から出ると、そこは高台に有ったらしくて街が見下ろせるようになっていた。

「わぁ!」

眼下に見えた街は真っ白で、何故か所々キラキラしていた。何故だろうと目を凝らしてみると、白を基調にした建物と街のあちこちに水路が通っていてそれが陽の光を反射して輝いていたのだ。
移動する人は道も有るけれど小船を使ったりもしていて、私の頭の中に水の都と言う言葉が浮かんだ。

綺麗!凄く素敵!あの小船に乗ってみたい!

思わず身を乗り出して眺めていたものの、我に返って慌てて周囲を見回した。
するとルナール様がじっと私を見詰めていた。興奮してしまった事が恥ずかしくて頬を染めると、ルナール様の視線が私からそれた。

「ささ、後ほど街はルナール様が案内して下さいますからね」

そう言ったナグル様にルナール様の眉が寄った。ルナール様、嫌そうな顔をしてる。

私はナグル様の勢いに押されながら再び歩き出した。



「あの、これ…キリヤ様から預かって参りました」

ちゃんと渡しなよ、と何度も言われたキリヤ様が私の為に作ってくれた資料。ナグル様はそれを笑顔で受け取って軽く目を通した。

「やや、これは有り難い。人間の情報は少ないですからなぁ、流石キリヤ様でございます。有り難く頂戴致しましょう」

ナグル様が、我が王もキリヤ様の様なら、と口にして居るのを見て少し心配になった。でもルナール様はどこ吹く風で、窓の外をじっと眺めていた。
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