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キミ日和

第5章 【溶けかけの雪だるま日和】夏目貴志




確かに貴志くんは変な行動が目に付くことも多かったけど、噂のように虚言癖だとか、情緒不安定だなんて思わなかった。
ただ控え目で、自分の気持ちを全然言葉にしない子だなって思って、それが無性に寂しく思った。


私にだけはちゃんと本当の気持ちを話してくれたらいいのに・・・そう強く願うようになるまで、さほど時間はかからなかった。
神様、貴志くんが私に心を開いてくれますように・・・そう椿神様にこっそり願を掛けた。


ある日、いつものように椿神様のところに行こうとしたら、貴志くんが青い顔をして走っているのを見つけた。


何もいないのに必死に後ろを気にしながら喚くその様子に一瞬驚くも、転んで助けを求める叫び声を聞いて、慌てて彼に駆け寄りその手を取った。


助けるってどうすればいいんだろう?なんて思いながら、とりあえず行こうと思っていた椿神社に駆け込むと、貴志くんの目つきが驚きと安心に変わったような気がして、あ、助けられたんだなって思った。


どうして助けた?って聞くから、助けてって言われたからだよって、貴志くんは嘘付くような人じゃないからって言うと、驚いたように目を見開いていた。
それから私にだけは本当のことを話してって指切りして約束すると、貴志くんとの距離が一気に近づいていくのを感じて嬉しかった。


「璃音、貴志くんには気をつけなきゃダメよ?女の子なんだから、何かあってからじゃ遅いのよ?」


貴志くんと仲良くなればなるほど、そう毎日のように口を酸っぱくして言う母が悲しかった。
思春期の娘がある日突然同級生の男の子と一緒に住むとなったら、そりゃ母親としては神経質にもなるだろう。
他人の子を育てるというのに抵抗を感じる気持ちも分からないではない。


私にとっては良い母だけど、だからと言ってあからさまな態度はあんまりで、でも母の性格上、はっきり文句を言えば余計に貴志くんへの風当たりが強くなるのは目に見えていて、こっそり影でフォローすることに徹した。


そのうちに貴志くんも少しずつ私に心を開いてくれた気がして、凄く嬉くて、もっと彼の事をしりたい、彼と近くにいたい、そうどんどん欲張りになっていった。

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