• テキストサイズ

薔薇と向日葵

第14章 兆候


「…直人、いつ引っ越すんだろう…。」

「今月末って言ってたぞ。」

「え?なんで知ってるの?」

「さっきご丁寧に挨拶しに来た。」

今月末…あと2週間も無い。

寂しさが増し、私は俯いた。

「そんな顔するなよ。」

「だってあと少しだよ?」

「そうだけど…お前がそんな顔で見送ったら、池田も悲しいんじゃねーか?」

確かに徹の言う通りだ。
最後くらい、笑って見送ろう。

「そうだよね。もう二度と会えないわけじゃないんだしね。」

直人と私は別れた。
直人が引っ越したらもう、会うことは無いだろう。

しかし、徹は私と直人が別れたことを知らない。

だから私は、笑顔でそう言った。

ふと、徹が私の手を見て目を細めた。

「お前、なんだその痣。」

徹に言われて気付いた。
知らない内に、右腕の内側に痣ができていた。

「あれ?こんな所いつぶつけたんだろう。」

「寝てる間に暴れたか?」

「そんな訳ないでしょ!」

笑う徹を睨み付けた。



私の体の異変は、この辺りから始まった。
まさか自分が病に侵されているなど、この時は考えもしなかった。
/ 280ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp