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鬼の嫁入り【薄桜鬼】

第2章 あの白い鳥が空に消えたら


「ね~、千景~。今日はどうするの~?」
「――。」
「ねぇ、無視?千景ってば~!ち~ちゃん!ねぇねぇねぇ?!」
「静かに飯も食えんのか、お前は。」

規則正しく箸を動かしながら綾女を見る。
綾女は返事があったのが嬉しかったのかへらへらと笑みを浮かべている。

「ね、千景!お味噌と秋刀魚が無くなったの!買い出しに行きたいんだけど。」
「ちょうど京に行く用事があるにはある。」

その言葉に表情がぱぁっと明るくなる。
綾女の笑顔は何故か華がある。
特別美人と言う訳ではないのに。

「一緒に行く!あ、でも京なら日帰り無理だよね?北斗どうしよう。」
「天霧か不知火に頼め。今回奴らは連れて行かぬ。」
「そっか、分かった!今から頼んで来る~!千景、置いてかないでよ!」
「騒々しい奴め。」

バタバタと北斗を連れて近所の恐らく天霧の家に行ったのだろう。
綾女は人間だ。
何故俺達鬼と共に暮らしているかは話すのも馬鹿らしい出会いがあったからだ。

「――もう二年になるのか。」

庭に咲く白梅を見ながら千景は呟いた。

「あの日も白梅が香っていたな。」

思い出すのは二年前の早春の日。
何の因果か知らないが千景は綾女と出会ってしまった。

「――変わらん「ただいま~!千景、まだちゃんといる?」――うるさいと言っているだろう。馬鹿娘。」

折角感慨に浸っているところを邪魔されて千景はいたくご立腹だった。
だがそんなのに憶する程、綾女は浅い付き合いじゃない。
まだその場にいた千景に安心したように笑い掛ける。

「千景が買ってくれた着物着てもいい?!」
「好きにしろ。着たところでその顔は変わらん。」
「どうせ可愛くないですよ~っだ!」

別にそんな事は言っていないだろう。
女と言うのは被害妄想が激し過ぎると千景はしみじみ思うのだ。
綾女の支度が整うのを千景は縁側で待った。

「――まだか。」
「ゴメンゴメン!お待たせ!似合う?」
「――馬子にも衣装、だな。」









Ep-02:あの白い鳥が空に消えたら
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