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鬼の嫁入り【薄桜鬼】

第14章 その眼とその唇とで君は嘘をつく


『鬼』は怖いものだと貴方達は言う。
だけど彼らより『人間』の方が怖いと思うあたしは何か間違ってるの?









Ep-14:その眼とその唇とで君は嘘をつく









「「――あ。」」

街中で偶然出会ってしまった。
鬼の女の子。

「知り合いか?千鶴?」

横にいた目付きの悪そうな人がこちらをジロリと見る。

「土方さん――。えっと――。」

あたしの事を話そうかどうしようか迷っているみたいだった。

「千鶴?」
「――風間と一緒にいた子、です。」
「何?!テメェ、奴らの仲間か?」

今にも斬りかかりそうな勢いで土方と言う男はあたしに向かって来る。
何だかとてもそれが不快だった。

「そうだって言ったら、この往来であたしのこと斬るの?」
「ッッ、テメェ何者だ?」

ようやく今が往来だと言う事を思い出したらしく、その殺気を収める。

「人に尋ねるなら自分から名乗るべきじゃない?『土方』サン?」

わざと挑発してやれば、彼は憎憎し気に舌打ちをした。

「――土方歳三だ。」
「ふぅん。あたしは綾女。――人間、だよ。」

残念ながら、と言う言葉は飲み込んだ。
あたしだって何度千景と同じ鬼だったらと望んだか分からない。

「人間、って――?貴方、どうして?」

千鶴と言う女の子が、驚いたようにこちらを見て来る。

止めて、同情しないで。

羨望が憎悪へと変わってしまう。
そんな醜い自分は嫌い。

「――綾女!いつまで道草を食ってるつもりだ。――ッッ、お前達もいたのか。」
「風間千景!?」

人通りの多いこの場所で斬り合いなど出来ず、微妙な空気が流れる。

「千景!!」

帰りが遅かったあたしを心配してくれたのだろうか。
目の前に現れた愛しい人に、力一杯抱き付いた。

「どうした?お前達、綾女に何かしたのか?」
「何もしてねぇよ。それより何の用だ?」

千鶴を庇いながら、土方が問う。
その様子に千景は笑った。

「勘違いするな。このバカ女を迎えに来ただけだ。今日はお前らに用はない。行くぞ、綾女。」

千景は綾女の手を引いて歩き出す。

「――ソイツは人間、なんだろう?」
「だからどうした。」

千景の掴む手に僅かに力が篭もったのは、綾女だけが知る秘密。
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