第9章 和婚式
ばかやろう。
あんだけ俺の回りをうろちょろされれば
いくら俺だってうすうす気付く。
それだけじゃない。
調理実習で作ったというクッキーを
大事そうに持ってきたり、
たまに俺が仕事の都合で
スーツで出勤したりすると
『先生、そのネクタイ、センスいい!』
と、目ざとく声をかけてきたり。
俺も、数年前まで学生だったんだ。
女子のそういう行動が
何を意味するかくらい、見当がつく。
だからこそ、
こっちからはわざと冷たく接した。
教師と生徒。
それがどんな禁断の仲なのか。
大人の俺の意志一つで
二人の人生が大きく変わることを、
高校生は知らなくても、
俺は、知っている。