第65章 【烏と狐といろいろの話　その6】

「木兎さん、あなたが文化祭の時なんも考えずにままコさんのスカートを勝手に触った挙げ句ドロワーズのことに言及して困らせた件を忘れちゃいけません。」
「ままコちゃんが睨(にら)んどるで、赤葦くん。」
「治君に突っ込まれるとは俺も迂闊だった。ごめんよ、ままコさん。具体的に指摘しないと木兎さん、絶対わからないから。」
「待てや、最初にいらん一文入れんなや。」
「ん、もしかして俺、微妙に怒られてる。」
「ん、とちゃう、明らかやらかしを後輩から指摘されとるやろ。ちゅうか自分、ままコさんに何してんねん。」
「やー、ままコが化粧して化けてたのがすっげえ珍しくてよ。」
「赤葦君の苦労を察するわ。」

木兎が北から辛辣(しんらつ)な突っ込み―ただし本人はあまりわかっていない―を食らっている間に、今度は女子陣がやってきた。

「ちょっと木兎、あんたまた何すっ飛んでんのよ。」
「美沙ちゃーん、おにーちゃんも久しぶりー。」
「あ、雀田さんに白福さん。こんにちはー。」
「お二人とも、ご無沙汰してます。」

縁下兄妹が挨拶をしたところで梟谷の女子マネージャーの一人、雀田かおりが申し訳なさそうな顔をする。

「うちの木兎が毎回ごめんね、ほんと子供なんだから。赤葦も大丈夫だった。」
「俺は問題ありません。ただ、木兎さんが無自覚にままコさんのロリ服コスプレのトラウマを抉(えぐ)りまして。」
「あんたっ、なんてことしてんのっ。」
「なんで言い付けんだよ、あかーしっ。」
「木兎、さいてー。美沙ちゃん、ごめんねー、よしよし。」
「ちょ、白福さんっ、もごっ。」
「ままコちゃんがスタイル抜群女子に急に抱っこされてなでなでされとる。」
「あれはお兄ちゃん以外抱っこ禁止にならんの。」