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【ハイキュー】エンノシタイモウトこぼれ話

第62章 【烏と狐といろいろの話 その3】


「ウケを狙ったつもりないんだけど、美沙じゃあるまいし。」
「だっておもろいもん。」
「何が。」

怪訝な顔で見つめる力に対し、侑はニィッと笑い返す。
どうにも向こうのペースに乗せられている気がする力だが、それ以上うまく返せない。
そして侑は言った。

「取られる思てるんか。」

今度はガバッと上半身を起こす力、睨んだつもりはなかった。
しかし無意識だったのだろうか。
侑はいつかの電話の時のように、おーこわ、とおどけた調子で自分も体を起こした。

「心配せんでも。俺もサムもままコちゃんは可愛い思うし、話したら楽しいと思てるからここまで来たけど、横取りしたりせんて。」
「ああ、そうか。君らの好みはもっとスタイル抜群の人だったっけ。」
「待てや、そういう話ちゃう。あとそれままコちゃん聞いたら、どうせ私はぺったんやとかおかしな思い込みせんの(しないの)。」
「言い聞かせたら大丈夫だろ。」
「え、こわ。なんの刷り込み。」
「兄貴の務めだよ。」
「務めとは。」
「とりあえずもう寝よう。明日みんなで出かけるし、もし北さんに聞きつけられたら怒られそうだし。」
「なんか適当に流された気ぃするけど、北さんに怒られるんは俺も堪忍。」
「あ、でもその前に」

文脈を全部無視してしれっと言う力に侑がズルッとなった。
力は内心でちょっと面白いかも、と呟く。

「そっちでは"可愛ええ"って言わないの。」
「わざとチョケて言う時あるけど、基本言わん。だっておかしいやろ。」
「おかしいって。」
「えーと、そのー」

寝る直前のまさかの質問に侑は頭を抱える。
彼としては感覚的、日常的なもので言語化が困難だったのだろう。

「ああ、ごめん。明日覚えてたら美沙か北さんに聞いてみるよ。」
「わざとそのネタ振らんかったか。てか、ままコちゃんから聞いたことないん。」
「たまたま不思議に思っただけだよ、意外と美沙にちゃんと聞いたことなかった、じゃあおやすみ。」
「おもろいけど腹立つわあ。」
「あー、無理承知だけど"おもろい"も使うの控えてくれると嬉しい。まあまあ雑な言い回しって聞くし。」
「自分はおとんか。」
「なんとでも。」

力は言って今度こそ沈黙し、侑に背を向けて目を閉じた。
ほったらかされた侑は1人脳内で、まま兄くんにやられた、クッソーなどと思っていたという。
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