第61章 【烏と狐といろいろの話　その2】

北信介が固まった。

「北さんがっ」
「フリーズしてもたっ。」
「美沙、この阿呆っ。」
「ほんまのことやもん。」
「お前忘れてるのか、文化祭の後しばらく知らない男子に声かけられたりしてただろっ。」
「もう今収束しとうし。」
「そういうことじゃないっ。」

双子が驚愕し、縁下力が義妹を説教している中

「一体どういう教育してんねん。」

程なく戻った北が力をじろりと見た。

「えと、俺、ですか。」
「基本自分が面倒見たってるんやろ。なんやこの無自覚とおかしな劣等感。」

義兄の立場としてはぐうの音も出ない。

「せやでー。」

ここで何故か侑が口を挟む。自分きっかけで力が先輩に怒られているのは忍びなかったのか。

「ままコちゃんはなーんも飾らんとこがおもろいけど、ちゃんと飾ったら可愛いもんなあ。」

美沙は、え、えとなるが治もうんうんと頷いている。

「そうな」

義兄に向かってそうなん、と聞こうとしたつもりの美沙だったが

「着物よう似合(にお)てたで。」
「あ、それはおおきに。」

代わりに答えるかのように北に言われて流れで礼を言う美沙、しかしふと気がつく。

「あの、つかぬことをお尋ねするんですけど。」
「なんや。」
「なんで北さんが私の着物姿のこと知ってはるんですか。」
「そこのチョケ2人が修学旅行んときの写真見せてきた。」
「勝手になんちゅうことをーっ。」
「北さんがご覧になったってことは。」
「まま兄くん、なんなんその目。」
「他の人にも見せただろ。」
「えーと、アランくん、大耳さん、赤木さんに理石。」
「挙げろってことじゃないんだけど、治君。」
「ちょっと見せただけやて。」
「君と侑君のちょっとは全く信用ならないな。」
「お、やるんか、まま兄くん。」
「サム、やったれ。」
「美沙の突っ込みには及ばないけど、舌戦なら受けて立つよ。」
「あかんて兄さん、落ち着いて、宮さんズも喧嘩売らんといてっ。」
「美沙は黙ってな。」
「ああもうっ、兄さんの阿呆ーっ。」

宮兄弟と北を迎えに行ってから、影山を巻き込んだ挙げ句に家でもこの有様、日頃義兄の仲間からも隠れブラコンなどと言われる美沙ですら叫ぶしかない。