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【ハイキュー】エンノシタイモウトこぼれ話

第55章 【王者の恩返し】 その2


さて、そうして縁下美沙が待ちに待った食べ放題の時間である。

「あれは。」

表情をさして変えず、しかし疑問形の口調で牛島が力に言う。

「全身から喜びが溢れ出ている図ですね。」

力は苦笑するしかない。
何せ義妹は並んだ料理を見た瞬間、普段より明らかに嬉しそうな表情になってあちこちを見回している。
口に出さずとも、どうしようどれからいこかな(行こうかな)と考えているのが丸わかりだ。
もし美沙が動物だとしたらさぞかし耳やしっぽがパタパタしていることだろう。

「物欲はあまりないくせに食欲はあるので。」
「食べ物に一家言ある方か。」
「よほど美味しくないとか添加物が多いとか、味付けが濃いとかじゃなかったら別に。」
「味付け。」
「関西仕込なので。」
「なら塩分が多いだろう。」
「それが、あいつの亡くなったおばあさんは濃口醤油派かつ薄味らしく。」
「あの孫にしてその祖母か。」
「確かにうちの美沙は変わってますけど、どうかそのへんで。」
「すまん。妹を冒涜するつもりはなかった、もちろん故人も。」
「いや俺はわかるんですけど、美沙が聞きつけたら多分うるさいことに。」
「そういえば地獄耳だったか。」
「今はあっちに夢中なんで大丈夫そうですけど。」
「いずれにせよ当人が喜んでいるならそれに越したことはない。」
「ありがとうございます。」
「その満面の笑みは。」
「美沙が嬉しいなら俺にとってそれ以上はないので。」
「これが惚気(のろけ)というものか。」

義兄と牛島がそんな会話をしているとはつゆ知らず、美沙は和食、イタリアン、中華、フレンチ、
あるいは色とりどりの甘味といろいろ用意されているメニューに目をやって無茶苦茶種類多い、ほんまにどれから行こうなどと考えるのに忙しかった。
が、話題の店ということもあって通路が混み合ってきた。
義兄達をほったらかして自分がぼうっと立っているのはよくない。
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