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【ハイキュー】エンノシタイモウトこぼれ話

第53章 【Sorry for Dali その6】


「いやあの兄さん」

恐る恐るといった様子で義妹が口を挟む。

「免除はしないからな。」
「いやそうやのうて(そうじゃなくて)、もうええ時間やしこれ以上茂庭さんをお引き止めするんは」
「ああ、確かに。」

兄妹は改めて茂庭に一礼する。

「茂庭さん、今日はホンマにありがとうございました。」
「こちらこそありがとう、大げさかもしれないけど凄くいい体験だったよ。」
「俺からも改めて、面倒見てもらってありがとうございました。」
「そうかしこまらないで、縁下君。それより2人共気をつけて帰ってね。」
「はい。」
「ほな失礼します。」

そうして縁下兄妹は茂庭と別れて帰路につくのだった。
茂庭はそんな2人の後ろ姿を微笑んで見送っていたのだが、ふと呟く。

「ジャージってことは縁下君、部活帰りにわざわざ来たのか。」

人が行ったり来たりする中、茂庭は1人額に汗を浮かべていたという。


とりあえず縁下兄妹はその後特にトラブルもなく帰宅した訳だが、大体この後はオチは決まっている。

「うわっ。」

力はベッドに倒れ込んでいた。
家に帰って自室に入った途端、義妹が着替えもせずに抱きついてきたのである。

「おい、どうした。」

迎えに行った時は散々文句を言ってた癖にと力は思う。
義妹はぎゅううとシャツを掴んで離さない。例によって顔は力の胸に埋めている。

「まさか茂庭さんがいじめたって訳じゃないだろ。」

義妹はもごもごと勿論と答える。

「茂庭さんはめっちゃ親切やし優しかったよ。一緒に色々見れて楽しかった。どっかの誰かみたいに勝手に抱っこもせんし。」

ここまで言われっぱなしではどっかの誰かが哀れ過ぎる、かもしれない。

「そりゃ何よりだよ。」
「せやけどやっぱり兄さんがええの。」

力はふぅと息をついて微笑む。

「本当にお前はツンデレにも程があるな。」
「知らんもん。」

"ちゃうもん(違うもん)"と返さないあたり、多少は認める気になったのか。
いつもどおりスリスリぐりぐりと顔を擦り付ける義妹の頭をそっと力は撫でる。

「そういや言うの忘れてたな、おかえり。」

言って力は相変わらず細っこい義妹の体を抱きしめ返した。
しがみついてくる義妹はどうやら、ただいまと言ったらしかった。
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