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【ハイキュー】エンノシタイモウトこぼれ話

第52章 【Sorry for Dali その5】


しばし力は無言でスタンプ合戦に応じた。
義妹はしぶとい。瞬間には弱いが粘り強い特性、流石というべきか。
力は一旦放置した。
途端にひっきりなしにスマホが振動、力のメッセージ画面に義妹が寄越した菌類達が繁栄する。
怒っているきのこ、ジタバタするきのこ、号泣するきのこ、炎を吐くきのこなど様々なきのこキャラは義妹の心情を物語っていた。

しかし力はふ、と笑う。
一瞬黒い何かが彼から吹き出して見えた為、バレー部の連中が震え上がるがお構いなしだ。

"パケ詰まりするぞ"

力が送ったのはたったそれだけのテキスト、しかし瞬間、義妹のスタンプ爆撃は止んだ。
ふぅ、と力は息をつく。

「ちょっと手こずったな。」

独り言まで言い出した。

「最近、大分反抗するようになったけど、」

すっとスマホを制服のポケットに入れながら力は呟き続ける。

「俺に勝とうなんてまだ早い。」

この時、一連の独り言が聞こえてしまった1年と2年は―月島を除いて―ひぃぃっと飛び上がって3年生達を見ていたが、当の年長者達も首を横に振っていた。
一方、気がついていない力はパッと顔を上げて言う。

「あ、お待たせしてすみません。しかもそこへ申し訳ないんですが、」
「ああ、行って来い。」

言い終わらないうちに澤村にぎこちない笑顔で言われ、1年の大半と3年もうんうんと頷く。
月島が阿呆臭いといった顔でそっぽを向いているのは気にならない。
が、2年仲間である田中と西谷が菩薩顔で手を合わせ、木下が目を合わせたらヤバいと言わんばかりに引きつった笑みで明後日の方を向き、成田は手を振ってくれているけれどこめかみに汗を浮かべているのが気に入らない。

後であいつら覚えてろ、と力は思うがそれより今は最優先事項がある。

「すみません。じゃあ失礼します。」

力は一礼し、大急ぎで駅へ向かうのだった。


次章へ続く
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