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【ハイキュー】エンノシタイモウトこぼれ話

第50章 【Sorry for Dali その3】


「ごめん、俺美沙さんの事だから軽く焼いて食べたら美味しそうとかジャム塗って食べたいとか言うとばっかり思ってた。」
「失敬な。」

美沙はぷぅとふくれっ面をして茂庭はヤバ、と内心焦ったが関西弁の少女はすぐにニッと笑顔に切り替わる。

「あのパンやったら甘いのよりチーズとかベーコン乗せて焼くんがええと思います。」
「やれやれ、美沙さんはいつから野郎を翻弄するような子になったんだい。」
「へ。」

二口の台詞じゃないけどいつもどおりの半分ボケだと茂庭は脱力し、2人はまた人の流れに乗って次の展示へ向かう。

「これは」

額に入った小さなその作品、美沙は境界を超えない程度に覗き込む。

「モデルさんとデザイナーさんですかね。」
「どうだろうね。」

確かに中央に頭が薔薇の花束になっている女性、片足は木のマネキン、腰を捻ったポーズで立っているあたりモデルのように見えなくもない。
手前には背中が大きくあいたドレスを着た女性、真っ赤に塗られた爪が印象的なその人物は片手に紙を握りしめているあたりから美沙はデザイナーだと思ったのだろう。

「めっちゃ何か言いたげな感じがするんですけど」

美沙が続けた。

「何を言いたいんかわからんです。」

少し悔しそうに呟く少女に茂庭は微笑み、そっと頭をぽむぽむとしてやる。
それこそまるで兄が妹にしてやるような具合だった。
本当はうっかり手を握りそうになったのだが、それは本人だけの秘密である。
美沙はおそらく驚きはしても後はケロッとしているだろうが、茂庭としては縁下力へ筋を通しておきたかった。

そうして更に人の流れに乗りながら2人は巨大な絵の前に来る。

「ああ。」

茂庭は思わず呟く。
そう、縁下美沙の誘いに乗ったのはこの絵を見たかったからだ。

物理的な意味でも芸術的な意味でも圧倒されて、この時ばかりは茂庭も美沙のことは言えないくらい作品に見入っていた。

広大な琥珀色をした砂漠のような地面、真ん中で縄跳びをしている白い服の少女、いやにくっきりと描かれた長く伸びている影、「縄跳びをする少女のいる風景」と題されたその絵の奥行きはいやに果てしなく見えて茂庭は一瞬ブルッとする。
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