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【ハイキュー】エンノシタイモウトこぼれ話

第46章 【王者の命】その6


さて、いよいよ本当に烏野の一行が帰る時間が迫る。

「お世話になりました。」

武田の一声のもと、烏野の連中はしたーっと揃って頭を下げる。
勿論美沙もである。

「お気をつけて。」

斉藤が言う。

「これに懲りたらせいぜい精進するこった。」

鷲匠が不器用全開で呟き、改めて失礼しますと挨拶をして烏野の連中はぞろぞろと外に出てバスに乗り込み始める。
もう暗くなり始めた中で美沙は力と一緒に順番待ちをしていたのだがザッザッと音がしてそこへ牛島がやってきた。
兄妹が何だろうと思っていると牛島は美沙を見下ろして口を開く。

「エンノシタ、美沙。」

美沙が初めてまともに牛島から名前を呼ばれた瞬間だった。

「急な呼び出しに応じてもらって感謝する。」
「いえ、こちらこそ。」
「すぐにとは行かないがこの埋め合わせは必ずしよう。」
「私は別に。私が出来る事でお役に立てたんやったら十分です。」
「なるほど、確かに言うとおりだな。」

牛島は義兄の力に向かって言い、力は微笑んで頷く。

「そういう奴です。」
「だがそういう訳にはいかない。働いてもらった以上、報いる義務がある。」
「牛島さんは律儀ですねぇ。」
「美沙、お前が言うの。」
「何か望みはあるか。」

急に牛島に聞かれて美沙はうーんと唸った。
ガジェット類に興味を示してやたら騒いだりする割にはあれこれ欲しがらない性質の為、こういう風にいきなり希望を聞かれると困ってしまうのだ。
しばし考えてから美沙はあ、と呟いた。

「食べ物。」

力がずっこけた。

「美沙、お前ね。」

ざっくりすぎる範囲に呆れたらしい。

「そうか。」

牛島は牛島で何を納得したのか。

「偏食があったりはしないか。あるいはアレルギーなどは。」

美沙は聞かれるままに自分の食の傾向を伝え、牛島はもう一度そうかと呟く。

「少し考える。またSNSに連絡を入れる。」
「楽しみにしてます。」
「ああ。」

当人らは例によって呑気に会話をしていたが

「また何だか妙なことになったな。」

力は大丈夫かなという顔をして後頭部をガシガシかいている。
が、ここで彼は気がついたようにそうだ、と呟いた。
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