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【ハイキュー】エンノシタイモウトこぼれ話

第43章 【王者の命】その3


10数分後には義兄の力、男子排球部顧問の武田、白鳥沢のコーチの斉藤の迎えがきた。
家を出たら見慣れない車、まずは義兄の力が先に降りてきた。

「美沙。」
「兄さん。」

美沙はパタパタと駆け寄る。本当は思わず義兄の腕に飛び込みたい心境であるがまさか顧問と他所のコーチがいる前でそうする訳にもいかない。

「ごめんよ急に。びっくりしたろ。」
「うん。ちゅうかウシワカさ」
「しっ、今はそれ以上言わない。」

2人でボショボショ言っているうちに武田と斉藤も降りてきた。

「お待たせしました。」
「武田先生。」

美沙が呟くと武田は側にいる斉藤に目をやる。

「美沙さん、こちらが白鳥沢バレー部の斉藤コーチです。」
「初めまして、白鳥沢バレーボール部の斉藤です。」
「あ、ええと、烏野高校1年の縁下美沙と申します。よろしくお願いします。」
「こちらこそ。急なお願いなのにありがとうございます。」

この人はあまり怖そうな感じやないなと美沙はぼんやり思う。牛島以下、癖の強そうなのが多いあのチームをどうやって指導しているのだろうか。
そんな挨拶もそこそこに武田がとりあえず行きましょうと言った。


4人は急いで車に乗り込み、運転席に座った斉藤が発進させる。
窓の外を流れる景色、揃って後部座席に座らせてもらった縁下兄妹、美沙はそっと義兄と目を合わせた。

「緊張してる。」

聞かれて頷く美沙に力は、だよなと頷いて苦笑する。

「俺もだよ。試合に出るより緊張するかも。」
「流石にそれは大げさちゃう。」
「お前を他所に連れて行くと大体何か起きるから。」
「兄さん、それは」

斉藤の耳に入ったらどうするのかと美沙は思ったが時既に遅しだった模様だ。
バックミラーにちらと映った斉藤の笑顔が一瞬引きつったのが見える。

「ああ、大丈夫です。」

しかもきっちり武田がフォローに入った。

「牛島君や他の皆さんと美沙さんは交流があるそうで。もしかしたらそれでちょっとお騒がせするかもしれませんって話です。」
「そうでしたか。」

斉藤は安心したように息をつくが、武田もこっそり息をついていたのを美沙は見逃さなかった。
多分前に力の忘れ物を届けに青葉城西へ突撃した時の大騒ぎを思い出しているのだろう。
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