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【ハイキュー】エンノシタイモウトこぼれ話

第42章 【王者の命】その2


「なるほど。」

話を聞いて力は呟いた。事はわかった。撮影担当が間に合わずの事態とそこで牛島が美沙を推薦したという流れはどうかと思うが事情はわかった。
だがしかし義妹は牛島のみならず白鳥沢のレギュラー勢とも大概関わりがある。
五色とは顔を合わせるとまず挨拶代わりに電脳だの脳筋だの言い合いを始める、天童ともよく軽口の応酬をする、何より一番問題なのはここの主将にしてエースの牛島に対して怖いもの知らずの言いたい放題である。幸い牛島本人は気にしていない。
だが彼は彼で義妹の発言に対し微妙にズレた返答をしては謎の雰囲気を作り出してしまう。監督とコーチの前でそれが発生したらどうなるやら想像しただけで怖い。

「事はわかりました、けど」

力はおずおずと言う。できれば義妹をここに来させる事態は回避したい。

「うちからここまでは結構遠いので来てもらうのはちょっと。」

ここに侵入したことがあるので道に迷う恐れはありませんが、とは流石に言えない。
とにかく力は遠まわしに拒否を示したが

「大丈夫。」

それは斉藤によってあっさり打ち砕かれた。

「俺が家まで迎えに行って連れていくし機材も学校(うち)で用意してるから何の心配もないよ。勿論、先に保護者の方に事情も説明する。」
「提案したのは自分です、急にそちらを巻き込んだのは本当に申し訳ありません。」

更に重々しく牛島が武田、烏養、力に向かって口を開く。

「ですが、彼女の特性を見込んだ上です。是非お願いします。」

退路は絶たれた。監督、コーチのみならず天下の主将に頭を下げられてはどうしようもない。

「わかりました。」

先程の烏養のようにため息をつきたいのをこらえて力は答えた。答えざるを得なかった。

「まず自分から妹に連絡してみます。でないと動揺して話が進まないと思うので。」
「本当にすまないね。」
「いえ。」

力は言って一旦自分のスマホを取りに行く。またため息をつきたくなった。あれほど義妹がこちらに来ないように配慮していたのにどうしてこうなるのか。
まだ練習試合が始まっていないうちから疲れる思いで力は連絡先から義妹の電話番号を呼び出してダイアルする。
メッセージアプリでもいいかと一瞬思ったが大事な用事の時はたまに接続が不安定になるアプリは避けた方が良い気がした。
ダイアルをしてしばし待つ。
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