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【HQ】春が始まる。(烏野逆ハー)

第12章 影山くん。




真っ暗な帰り道を二人で歩いていた。



影山くんとはよく二人で並んで歩いたけど、今の私達はもうあの頃の関係じゃない。
ついさっき、彼氏と彼女になったのだ。



新幹線の停車駅から、私の最寄り駅まで。
そして、最寄り駅から私の家まで。



結局疲れている影山くんに私送らせる形になってしまった。



申し訳なくて平謝りしていると、



「そういうのやめろよ。もう、遠慮するような関係じゃねえだろ。」



と窘められた。



「それに俺も…お前に会えて嬉しかったから。」



素直にそう言われて、思わず頬が熱くなる。



家の近くまで来たところで、私は影山くんに別れを告げた。



「送ってくれてありがとう。明日も…会えるよね?」



「当たり前だろ。同じ学校なんだし…。そんな不安そうな顔すんなよ。」



照れた様子で素っ気なく言う影山くんに笑いがこみ上げた。



だって。
影山くんに会えない時間が私を臆病にしたんだもん。



もうこのままずっと会えないんじゃないか。
遠くに行ったまま、私のことなんて忘れちゃうんじゃないかって。



こんなに誰かを求める感情があることに、私は生まれて初めて気付いたんだよ。


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