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白いアリスは彷徨う

第29章 崩壊






仁多「・・・。」

多々良「答えて、仁多。」




仁多「・・・そう簡単に言うわけないだろ。」




バッと多々良の目の前に突如現れた仁多。
しかし、多々良は平然としていて、仁多の足を引っかけて地面に押し倒す。





多々良「仁多。女王は俺達の事を知っていた。違う?」
仁多「何を根拠にそんなことを言うんd」
多々良「多々良はいい子だから、いい相手が見つかるはずだよ。俺とは違ってね。・・・仁多は、バラバラになる前にそう俺に言った。覚えてるよね?」
仁多「・・・だから、何だって言うんだよ。」
多々良「・・・女王は仁多を引き取ろうと提案した。けれど、仁多はそれを断って俺を引き取らせようとした。だから、仁多はああ言ったんだ、・・・でも、結局俺は女王に引き取られる事はなかった。仁多はその時は知らなかっただろうけど、数年経って俺の事を知って後悔した。違う?」

仁多「・・・。」

多々良「そうすれば辻褄は合うよね。女王の元に行けば凄い人にも会えただろうし、また違った人生だったのかもしれない。・・けど、俺はこの人生で良かったと思ってる。」
仁多「・・・た、たら・・。」
多々良「キングに会えた。吠舞羅の皆に会えた。・・・出会い方は微妙だったけど、怜にも会った。國常路大覚にも会った。・・・十分だよ。これで。」
仁多「・・・俺は、お前の兄として、何もできなかった・・!!」


ハッとして多々良が仁多の顔を見ると、仁多の目には涙が溜まっていた。




仁多「幼いからって理由でお前の側にいてやれなかった。大人の理不尽な理由で俺の前から多々良はいなくなってた。女王が手を差し伸べてくれたけど、遅かった。俺は・・・お前がいないと世界が色褪せて見えた。」



自身の腕で顔を隠す仁多。



仁多「錯覚かと思った。でも、そんな事はなくて、本当にモノクロの世界だった。お前がいないだけで、世界に色がなくなった。」
多々良「・・・色覚異常って、事・・?」
仁多「女王は俺も引き取って、お前も探し出してくれると言った。けど、お前が新しい家で幸せならと思って、その提案を断った。・・・断らなければ良かった。」



ポロポロと伝う涙が見えた。








仁多「多々良が無色の王に殺されたって聞いた時、何も見えなくなった。自分の王なのに、流を許せなかった。」





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