第6章 小さな亀裂
後ろにいたのはまなくんで、
女の子に向かって笑顔でそう言った。
「あ、やっぱり付き合ってるんだね!お幸せに!」
その子は私たちを見てニコニコしながら
走って行ってしまった。
姿が見えなくなってすぐ、
慌ててまなくんが私から離れた。
「ご、ごめんっ!しおちゃんが困ってたからつい…。」
そう言ったまなくんは、
さっきまでとは違ういつも通りのまなくんだった。
「あ、ありがとう。」
私がお礼を言うと、まなくんは微笑んで
「俺は、しおちゃんのことが小さい頃から好きだったんだ。きっとしおちゃんが好きなのは俺じゃない。心の中では分かってるんだけどさ、それでも、しおちゃんが好きなんだ。こんなこと、本当は嫌だけど…。」
まなくんの顔はとても悲しい表情をしていて、
私の胸がギュッと締め付けられる。
「私は…」
言うべきではなかったのかもしれない。
「まなくんが好き。」
嘘を、生まれて初めて嘘をついた。
ごめんね、はなちゃん。
私がここで本当のことを言うわけにはいかないんだ。
犠牲になるのは私だけで充分だから。