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【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)

第10章 プリンセスと秘書







 令嬢の足音が消えると、
 私はゆっくりルイを振り返った。

ルイ「・・・・・・・・・」

 真っ直ぐに見下ろす視線を捉えて、
 私は口を開いた。

「・・・どうして助けるようなこと、言ったの」

ルイ「それは・・・」

 視線を伏せたルイが、
 いつもの淡々とした口調で言う。

ルイ「・・・君が、プリンセスとしてやっていけるって、そう判断しただけ」

(・・・プリンセスとしてやっていける・・・か)

「・・・そう」

ルイ「・・・秘書の方は」

「え・・・?」

ルイ「・・・秘書、やるんでしょ」

(あ・・・そうだった)

 パーティーの準備で
 すっかり忘れてしまっていた。

「・・・やる」

ルイ「・・・俺は、甘やかすつもりはないから」

 そんなルイの言葉に、
 私は口角を上げて答える。

「・・・甘やかされるつもり、ないから」

ルイ「・・・っ・・・・・・」

 ルイの目がゆっくりと見開かれて、
 その視線が夜空に移る。

ルイ「・・・ほんと、変な人」

(あ・・・・・・)

 夜空に向けられたルイの瞳が、
 ゆっくりと柔らかくなった。

(・・・・・・初めて見た)

 ゆらゆらと揺れる
 淡いキャンドルの灯りの中で、
 空を見上げて笑うルイは、
 まるで息を吹き込まれた
 綺麗な人形のように見えた。

「・・・初めて見た」

ルイ「・・・え?」

 口を突いて零れた言葉に、
 ルイの瞳が再び私に向けられる。

「・・・笑った顔、初めて見た」

ルイ「・・・・・・っ・・・」

 ルイはふいっと顔を背けると、
 すたすたと歩き出す。

「・・・え。ちょっとルイ、待って」

ルイ「・・・待たない」
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