【100プリ】 消えない過去と生きる今(ルイとのお話)
第9章 親善パーティー大作戦
静かな部屋の中に、
ペンを動かす音と
時折紙を捲る音だけが響いていく・・・――。
ジルの執務室に移動した私は、
机に積まれた招待状にサインをしていた。
ジル「なんでも・・・」
黙々と手を動かしていると、
ジルが静かに口を開く。
ジル「親善パーティーを頑張る決意を固めたのは、ハワード卿を庇ったからだとお聞きしましたが・・・」
その声に私はふっと手を止めて、
真っ直ぐにジルを見つめ返した。
「・・・別に庇った訳じゃない。ご令嬢たちの挑発に、私がただ乗っただけ。頑張るつもりもないし、・・・ルイのためでもない・・・」
(相手になる気なんて、更々ない・・・)
小さな沈黙のあとに、
ジルがふっと笑みを零した。
ジル「そんなに怖い顔をされると困りますね。ハワード卿と貴女が、仲睦まじくされたらそれは喜ばしい限りですが・・・、私にとって今はプリンセスとしての務めを全うして頂くことの方が最優先事項ですので」
「・・・・・・・・・」
ジルの偽りのない笑顔に
返す言葉を失っていると、
扉の向こうから声がした。
ジル「少し出てきます。貴女はそれをきちんと書き終えてくださいね」
「・・・わかってる」
ジル「今夜中に」
「・・・・・・・・・」
艶のある笑みを残して、
ジルは扉の向こうに消えて行った。
(・・・鬼)
一度だけ大きく息をついて、
頬杖をついて窓の外を眺める。
(きっと、ジルは誰よりも色んなことを考えてる・・・)
国のこと、国王陛下のこと、
王宮のこと、そして私のこと・・・。
挙げ出したらキリがない。
(・・・集中、しないと)
気を取り直して再びペンを持ったその時、
扉が開く音が聞こえた・・・――。