第9章 罪人
藍染の元で特別指南を終えた優姫は四番隊に戻って数ヵ月が過ぎた。
緊急に呼び出された卯ノ花他、全ての隊長が一番隊に集められていた。
「現在、現世において死神の規律に反する罪人がでた。」
一番隊の隊長、山本が重い口を開き隊長全員の顔を見渡す。
「罪人の捕縛に特別任務として向かってもらう。」
山本の鋭い視線にその場に僅かな緊張が走る。
「今回は六番隊に行って貰う。罪人の名は……」
罪人の名が告げられる。
その名を耳にした瞬間、朽木白夜の手に僅かに力が入る。
しかし、その場にいた隊長の誰も気づかないほど僅かなものだった。
(おい、おい、その罪人って……)
八番隊隊長の京楽はその場にいない友人の顔を思い浮かべる。
その日病欠で席に着いていない十三番隊隊長、浮竹の部下だ。
そして、任務を命じられた朽木の……
「罪人を捕縛した後に処分が下される。皆そのつもりでいるように。本日の隊主会はこれまでじゃ。」
山本が閉会を宣言すると、その場の緊張が解けた。
それぞれ立ち上がり各隊に戻ろうとする。
その中で、朽木が卯ノ花に近づく。
(珍しいな……)
京楽が目で追っていると、朽木が口を開く。
「すまないが、現世に向かう際に必要な備品を後で言付ける。そちらの隊の瑞原に届けさせて貰えるだろうか?」
静かな声で告げられた名前。
瞬間、その言葉を耳にした数人がピシリと固まった。
(なんだよ、この緊張は……)
一気に殺伐としたその場の空気に京楽がぎょっとする。